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長野県上田市の「ゼロカーボン×交通まちづくり」(6)

投稿日:2024年6月18日 更新日:

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赤い鉄橋」でつながる上田電鉄別所線

上田市の公共交通軸のひとつに、上田駅から別所温泉駅を結ぶ上田電鉄別所線がある。上田駅から別所温泉駅までの11.6kmを30分弱で結んでおり、朝6時台から夜22時台まで(途中の下之郷までは23時台まで)、日中は毎時1本程度走っている。

単線の線路を2両編成の電車がのんびり走るローカル鉄道だが、途中の上田原までは住宅地で、また沿線に大学も立地していて、通勤通学や買い物などの生活利用が多い。
終点の別所温泉駅は信州最古と言われる温泉地・別所温泉の入口に位置する。3つの外湯(共同浴場)と多くの温泉宿が立地しており、平安時代開創と伝わる古刹を中心に温泉街が形成されている。駅前には市営の温泉施設「別所温泉あいそめの湯」もあって、日帰りから宿泊まで多くの観光客が訪れる。

別所温泉駅と列車の写真

別所温泉駅を発車する電車 駅舎には観光協会が入っており、観光案内所を兼ねている

 

別所線は私鉄の上田電鉄が運営しているが、道路改良と商業施設等の郊外化により旅客を自家用車に奪われたことで、旅客運賃収入のみでの維持は困難な状況になっている。1973年より度々廃止が取り沙汰されたが、沿線住民等による路線存続運動が起こるなどして、公的補助を受けて路線が維持されている。

このようなローカル鉄道に対し「赤字」と論う向きもあるが、それは一方的な見方でしかない。別所線は2018年度に1日平均3,559人[9]が利用しており、そのおよそ半数が定期券(通勤通学)だ。電車は当時1日35往復走っていたので、平均1本あたり約51人乗っていることになる。電車が走ることで、公害を撒き散らす危険な自家用車の走行を1日あたり2,737台分も削減できている[10]のだから、環境負荷や交通事故抑止などのクロスセクター効果[11]は高そうだ。

このように沿線住民にも観光客にも利用されているローカル鉄道だが、2019年10月の台風19号で千曲川が増水した際、堤防が崩壊して橋脚が倒され、千曲川に架かる「赤い鉄橋」の1桁間が落橋する被害が発生した。この橋は上田駅を出てすぐの場所に架けられており、上田〜城下間は長期運休を余儀なくされた。

被災した千曲川橋梁の写真

堤防が崩れ、1桁間(右端)が落とされてしまった別所線千曲川橋梁(2020年夏に撮影) 堤防(写真右側)と道路は速やかに修復されたが、鉄道橋の復旧はなかなか決まらなかった

 

【脚注・出典】

9. 平成30年(2018年)長野県統計書「13.運輸」より、上田電鉄の乗車人数が1,299,106人、うち定期 638,880人、定期外660,226人。上田駅の1日平均乗車人数は1,671人。 https://www.pref.nagano.lg.jp/tokei/tyousa/tokeisho.html

10. 国土交通省が公的に採用している自動車の平均乗車人員1.33人/台で換算。

11. クロスセクター効果については、本誌109号(2022年9月号)「存続の危機に立たされる地域の鉄道~鉄道と道路のダブルスタンダードを問い直す~」を参照
https://kuruma-toinaosu.org/wp-content/uploads/2022/10/kt109.pdf

 

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