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長野県上田市の「ゼロカーボン×交通まちづくり」(9)

投稿日:2024年6月18日 更新日:

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環境省の「脱炭素先行地域」

ところで、環境省の「脱炭素先行地域」事業では2024年3月時点で全国36道府県94市町村の 73提案が選定されている[16]が、エネルギー転換部門が中心で、運輸部門の取り組みは少なく[17]、しかも数少ない運輸部門の取り組みが自家用車のEV化などクルマ目線に偏っているきらいがある。

バイオディーゼルバスが走っているところの外観写真

栃木県日光市では宿泊施設等から廃食油を回収し、奥日光地域を走る路線バス(東武バス日光)にバイオディーゼル燃料を導入した

エネ転換部門(発電など)が取り組みやすいことは理解できるが、欧州などでは交通部門での取り組み(公共交通や自転車の利用促進による自動車の削減)が盛んなだけに、日本における交通分野の取り組みの低調ぶりが気がかりだ。
とりわけ軌道系公共交通の取り組みは本誌前号[15]で紹介した栃木県宇都宮市(第2回)と、今回紹介した長野県上田市(第4回)のみだ。本事業は自治体が企画・提案したものに国(環境省)が補助する仕組みなので、残念なことに日本では環境分野で鉄軌道の活性化に熱心な自治体が少ないことの表れなのだろう。

我が国においても公共交通や自転車の利活用による自家用車の削減などのクロスセクター効果[11]への関心が高まり、公共交通分野での取り組みが増えることを願うとともに、とりわけ希少な鉄軌道を絡めた環境分野の先行事例として、両市の取り組みに期待したい。

【脚注・出典】

11. クロスセクター効果については、本誌109号(2022年9月号)「存続の危機に立たされる地域の鉄道~鉄道と道路のダブルスタンダードを問い直す~」を参照
https://kuruma-toinaosu.org/wp-content/uploads/2022/10/kt109.pdf

15. 本誌115号(2024年3月号)「芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)の開業効果」を参照
https://kuruma-toinaosu.org/wp-content/uploads/2024/03/kt115.pdf

16. 環境省のWebサイトで参照できる
https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/preceding-region/

17. 他に、公共交通主体の都市空間の創出を掲げる大阪府堺市(第1回)と道路空間再編に取り組む大阪市(第4回)、コミュニティバスをEV化する長野県小諸市(第3回)、観光分野で取り組む長野県松本市(第1回)や栃木県日光市(第3回)など、公共交通の利用促進を掲げている取り組みはいくつかある。

 

【参考】

・上田電鉄別所線 全線開通当日と復興までの軌跡(上田市行政チャンネル YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=r7QF-gVnipQ
・繋げる ~赤い鉄橋を蘇らせた工事の記録~(東急建設 YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=nXzRnC1W6fU
・市内高校に公共交通で通学できます!(上田市)https://www.city.ueda.nagano.jp/soshiki/kotu/92958.html
・脱炭素先行地域(上田市ホームページ)https://www.city.ueda.nagano.jp/soshiki/seikan/89115.html
・上田市と民間事業者8者が、環境省の第4回「脱炭素先行地域」の選定を受ける! ★「ローカル鉄道と市民がともに支え合う『ゼロカーボン×交通まちづくり』」の計画提案( 東信ジャーナル)https://tjournal.co.jp/local/ueda/post-13169/

 

(神奈川県川崎市在住)

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