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長野県上田市の「ゼロカーボン×交通まちづくり」(7)

投稿日:2024年6月18日 更新日:

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この台風では長野市にある北陸新幹線の車両基地が水没し[7]、浸水した北陸新幹線の車両10編成が廃車となる[8]など各地に大きな被害を出した。

別所温泉駅構内に飾られた折り鶴の橋と、キャラクターの等身大イラストの写真

別所線の全線復旧を願い市民より寄せられた折り鶴で作られた「赤い鉄橋」が、今も別所温泉駅に保存されている。中央は別所温泉駅の観光駅長をイメージした上田電鉄公認キャラクター「八木沢まい」
(2024年3月撮影)

上田電鉄の千曲川橋梁は復旧に8億円以上かかると見積もられ、元より経営体力の乏しい上田電鉄による復旧は困難と考えられたが、復旧を願う市民からの寄付金が1億円を超えるなど復旧を望む声が高まり、その声に応えて上田市が千曲川橋梁を保有する一部上下分離方式を採用することで国の補助制度を適用できるようになり、2021年3月28日に全線復旧を遂げた。

千曲川に沿う道から望む鉄橋を走る列車の写真

1年半越しで復旧を遂げた千曲川橋梁を渡る別所線電車(2021年4月撮影)

このように市民に愛されている上田電鉄別所線だが、人口減少および2020年からの新型コロナウィルス感染症による旅客の減少に見舞われ、乗客数は戻っていない。2021年3月の全線再開時のダイヤ改正で運行本数は削減され、2024年4月時点では1日28往復(休日は23往復、いずれも途中の下之郷止まりを含む)になっているが、引き続き毎日朝6時台から夜10時台まで走っており、市民の足を支え観光客の足をつなぐ重要な公共交通軸を担っている。

この別所線の利用を盛り上げようと、自治体や市民団体は様々な取り組みを行っている。近年は前述の「TicketQR」を別所線にも導入し、切符を買ったり車内で現金精算する手間を省けるキャッシュレス乗車に対応した。「TicketQR」は1回限りの乗車にも対応しているが、プリペイドバリューを購入すると2,000円で2,200円分乗れるし、期間限定だが割引率の高い「マイレールチケット(QR式回数券)」も購入できる。定期券も駅窓口へ行かずに購入できて便利だ。
2021年には「上田市・千曲市広域シェアサイクル」実証実験を開始。春から秋にかけての期間限定ではあるが毎年実施しており、2024年4月より上田電鉄に委託して本格実施に移行した。ドコモ・バイクシェア[12]のシステムを導入し、上田駅周辺や上田電鉄沿線および信濃国分寺駅にシェアサイクルポートを設置している。電車から乗り継いで駅から離れた施設や観光地へ向かう市民や観光客の足をつなぐ役割を果たしている。

【脚注・出典】

7. 台風19号による北陸新幹線の設備等の主な被害状況について(JR東日本、2019年10月13日)https://www.jreast.co.jp/press/2019/20191013_ho04.pdf

8. うち8編成がJR東日本の所有で、2編成はJR西日本の所有。JR東日本の被害は鉄道施設の復旧に約 170億円、浸水し廃車となった新幹線車両8編成の新造費用に300億円。うち一部は保険の対象となる。運休による減収額は別途。
台風第19号における被害額について(JR東日本、 2019年11月29日) https://www.jreast.co.jp/press/2019/20191129_ho01.pdf

12. 本誌93号(2018年9月号)「シェアサイクルの使い方」を参照
https://kuruma-toinaosu.org/wp-content/uploads/2021/08/kt093.pdf

 

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