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対談 ( 4 ) テーマ2 「自転車 × ジェンダー」

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「子どもが幸せに育つまち:サドルの上から見た交通」(2024年4月20日) の講演に続いて行われた対談会のうち、テーマ2 「自転車 × ジェンダー」の内容です。

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岡田さん  こうやって会場を見渡すと圧倒的に男性の方が多いですよね。今日は、女性であるからこそ見えている景色があるのだということをご紹介できればと思います。

A. あらゆるものはマジョリティ男性を想定して作られている

岡田さん  実は、交通を含めあらゆるものが、マジョリティ男性を想定して作られています。ここでいうマジョリティとは、性別だけの話ではなく、健康で、筋力があって、日本人で、安定した職についている人という意味です。

宮田さん  ここではわかりやすく「男女」とバイナリーな言葉遣いをしていますが、もちろんそれだけの話ではないことはご理解ください。ここでみなさんにおすすめしたいのがこの…
岡田さん  『フェミニスト・シティ』という本です。

「フェミニスト・シティ」の表紙。レスリー・カーン 著。東辻賢治郎 訳

B. 女性が怖いのはクルマだけではなく…

岡田さん  この本に書いてあることは、女性にはとても共感できることばかりで、よく言語化してくれたなと思います。交通にも大きく関わる内容で、たとえば私は中高生のころ夜遅くまで塾で勉強してから自転車で夜道を帰っていたのですが、そのとき怖かったのは自動車ではなく、男性に襲われることだったんですね。
本書から一節を引用します。

「私も人との偶然の出会いがある、フレンドリーな街に住みたいとは思っている。しかし、私が一人でいる自由や安全を男が尊重していると確信できない間は、反社会的といわれてもイヤホンを手放すつもりはない」

ここではイヤホンが挙げられていますが、同じように自動車も、女性の身体的、物理的な弱さを埋めあわせる道具として機能します。車に乗ってしまえば、車そのものに共通する危険はあるにせよ、腕力がないという理由で暴力を振るわれたりするリスクからは解放されるわけです。さきほど「4分類」が登場しましたが、「関心はあるが不安」という層の大部分を占めるであろう女性が抱く恐怖心へのケアが、デザイン上の重要な要素になってきますね。

宮田さん  イヤホンによって外部と自分とを遮断する行為、自転車ですとバッシングを受けたりしますよね。ところがイヤホンなしの「オープンな状態」だと、男性が気軽に誘いをかけてくる、プライベートに踏み込んでくるという状況がこの本で語られているんです。アクティブ交通に対する障害のひとつとして紹介していただきました。

 

C. 意思決定の場に女性が少なすぎる

岡田さん  ジェンダーギャップ指数が世界125位。これが日本の置かれている状況なのですが、こうなっている理由のひとつに、家事育児介護といったケア労働、無償労働が女性の役割と考えられているというのがあります。たとえば、小さい子どもがいる私が学会や勉強会に参加すると、結構な割合で「お子さんはどうしているの?」と聞かれ、夫が面倒をみていますと答えると「優しい旦那さんだね」「理解があっていいね」と言われます。夫が学会に行ってもそういうことは言われないと思うんです。
こうした状況は女性自身も内面化してしまっていて、私自身も医師としてバリバリ働くことに難しさを感じ、妥協点あるいは解決案をなんとか見出してやりくりしているわけです。議員ですとか、もっと一般的に管理職など、意思決定を伴うハードな仕事が、ケア労働との両立を想定していない。

宮田さん  ケア労働を誰かが肩代わりすることによって初めて成り立つものになってしまっているわけですね。

岡田さん  誰かの権利を守ろうとすると、別の誰かの権利を奪おうとしているのではないかと思われることもあるのですが…。

宮田さん  男性と呼ばれる立場の人たちも、生きづらさを感じながら抜け出せずにいたりする、そういうところに違う属性の人が入ってくると、問題が可視化されたり、つらさを口にしてもよかったんだという気付きが得られたりします。
この話題に関して、次の図をごらんください。三大都市圏で男女の目的別自転車利用回数を比較しますと、たとえば「買い物」では女性が男性の3倍となっています。「送迎」ですともっと差が大きいですね。無償ケア労働の担い手の偏りが、こうした統計にもあらわれています。ところがこれまでの自転車利用環境整備は、こうした人にはフォーカスしていない。基本的には、「健常」男性が通勤で家と職場を直線的に往復する使い方が主に想定されているわけです。これからは、「4分類」における「関心はあるが不安」な層のニーズを考慮していく必要がありますし、それができているところは成果につながっています。

 

下記説明の棒グラフ▲ 図2 男女別にみた、移動目的ごとの1日あたり自転車利用回数 (平日)。 女性が買い物や送迎を男性より多く負担しており、三大都市園ではそれを主要因として女性が自転車を使う頻度が高くなっている 。
(国土交通省「都市における人の動きとその変化~平成27年全国都市交通特性調査集計結果より~」 所収のグラフを元に作成) (7)

『世界に学ぶ自転車都市のつくりかた』
8章 日本<総論>: 今よりもっと自転車が選ばれる社会へ より

 

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 テーマ1「自転車 × 子ども」

テーマ2 「自転車 × ジェンダー」

テーマ「自転車×幸福で豊かな生活」

質疑応答

 

講演「子どもが幸せに育つまち:サドルの上から見た交通」

講演・対談会「子どもが幸せに育つまち:サドルの上から見た交通」を開催しました

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